大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)3181号 判決

被告人 竹内三郎

〔抄 録〕

所論は被告人の精神障碍の主張をも含めて原審の量刑不当を論難するので、訴訟記録並びに原判決を精査すると、原審に於て弁護人はいわゆる冒頭陳述に於て事実についての意見はないが被告人は精神病者である旨主張し、且つ証拠調の段階に於てこの点の立証として医師中村邦武作成の診断書を提出し、且つ被告人の精神状態並びに責任の程度を明らかにするため証人として右中村邦武の尋問を申請したのに、原審裁判所は該診断書のみを取調べ証人の申請を却下したが、弁護人は最終意見として更に被告人は脳を患い診断書にも記載されている通り正常の精神状態とは考えられないから云々と陳述し、寛大な裁判を願いたい旨弁論しているのであるから、原審に於て弁護人は被告人が本件犯行当時少くとも心神耗弱の状態にあつたことを主張したものと解するのが相当である。然るに原判決はこれに対する判断を示しているものとは認められないから、原判決は刑事訴訟法第三百三十五条第二項に違反し、判決に示すべき判断を逸脱したものと云わなれけばならない。而かも当審の事実取調の結果をも参酌して、訴訟記録及び原審で取調べた証拠を検討してみると、被告人の本件犯行当時に於ける精神障碍を疑わしめるのであるが、この程度の審理を以てしては、それが刑の減免理由としての心神耗弱乃至喪失に該当するか否かを断定し難いのである。そこで、なお審理の結果如何によつては、被告人の責任能力に関する事実の確定に影響を及ぼすこともあり得るので、かかる場合には原審の前掲訴訟手続の法令違背は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点に於て原判決は破棄を免れない、論旨は結局理由があることに帰する。

(中西 山田 石井謹)

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